骨折や捻挫、手術後のリハビリで松葉杖を使い始めたものの、「なんだか脇や手首が痛い」「歩くとすぐ疲れる」と感じている方は少なくありません。実はその多くが、道具の問題ではなく歩き方のクセによるものです。
この記事では、松葉杖を使ううえで土台になる姿勢の作り方から、平地での歩行動作、階段の昇り降りの原則、疲れにくい休み方までを、歩行フォーム・体の使い方に絞って解説します。松葉杖の種類の選び方や商品比較は折りたたみ松葉杖おすすめ比較5選で詳しく紹介していますので、あわせてご覧ください。
なお、本記事の内容は一般的な松葉杖の使い方の基本をまとめたものです。骨折の部位や術式、荷重の可否によって適切な歩き方は異なります。体調に不安がある場合や痛みが続く場合は、自己判断を続けず主治医・理学療法士の指示を優先してください。
松葉杖の正しい姿勢の基本|体重を支える場所を間違えない
松葉杖歩行でもっとも大切な原則は、体重を「脇」ではなく「手のひらとグリップ」で支えることです。脇当ては体を安定させるための添え木のような役割であり、体重をかける部分ではありません。脇に体重を預ける歩き方を続けると、腋窩(えきか)神経が圧迫されて手や腕にしびれが出ることがあるため注意が必要です。
正しい姿勢を作るポイントは次の3つです。
- 脇当てと脇の間に隙間を作る:脇当てを密着させず、指2〜3本分のすき間を保ったまま立ちます
- 肘を軽く曲げてグリップを握る:腕を伸ばし切らず、肘を軽く曲げた状態でグリップを握ると力が入りやすくなります
- 視線は正面、胸を軽く張る:足元ばかり見ると猫背になり重心が前に崩れやすいため、視線は2〜3m先に置きます
この姿勢を「立った状態」で一度確認してから歩き出すだけで、その後の歩行動作の安定感が大きく変わります。
平地での歩き方3動作|スムーズな体重移動の流れ
平地を歩くときの基本動作は、次の3つの動きの繰り返しです。一つひとつを分解して意識すると、フォームが安定しやすくなります。
- ①松葉杖を前に出す:両方の松葉杖を、体から見て30cm前後の少し前方に置きます。遠くに出しすぎるとバランスを崩しやすくなります
- ②手のひらで体を支え、重心を移す:グリップを握った手のひらの付け根(手根部)に体重を乗せ、上体を松葉杖側にゆっくり移動させます。このとき腕だけでなく、軽く体幹を使って支える意識を持つとぶれにくくなります
- ③健側の足を運ぶ:怪我をしていない側の足を、松葉杖の設置位置と同じか、やや手前に踏み出します。歩幅を大きく取りすぎないことが安定のコツです
歩くテンポは「1・2・3」と一定のリズムを保つことを意識してください。急ぎ足になるとリズムが崩れ、着地のタイミングがずれて転倒のリスクが高まります。方向転換をするときは、その場で細かく足踏みするように向きを変えると安全です。
階段の昇り降りの原則|上りは健側から、下りは患側から
階段は松葉杖歩行の中でもっとも注意が必要な場面です。基本の原則は「上るときは健側の足から、下りるときは患側の足から」で、「上りは健(けん)から、下りは患(かん)から」と覚えておくと迷いません。
- 上るとき:健側の足を一段上に乗せる → 体重を健側の足に移す → 松葉杖と患側の足をそろえて同じ段に引き上げる
- 下りるとき:松葉杖を一段下に下ろす → 患側の足を同じ段に下ろす → 体重を支えながら健側の足を下ろす
手すりがある場合は、手すり側の松葉杖を反対の手に持ち替え、片手は手すり・もう片手で松葉杖1本と体を支える形にすると安定感が増します。手すりがない階段や段差が大きい場所では、一段ごとに完全に体勢を整えてから次の段に進み、決して急がないことが大切です。不安が強い場合は、エレベーターやスロープなど階段を使わない動線を選ぶことも有効な選択肢です。
松葉杖で疲れる原因になりやすいNG動作
「思ったより早く疲れる」と感じる場合、多くは次のようなクセが原因になっています。
- 脇で体重を支えてしまう:脇当てに寄りかかると腕の力を使えず、肩や首の筋肉ばかりが疲労します
- 猫背で下を向いて歩く:重心が前に崩れ、腕とふくらはぎに余計な力が入ります
- グリップを指先だけで握る:手のひらの付け根で支えず指先に頼ると、握力だけで体重を支える形になり手首が疲れます
- 大股で急いで歩く:着地のたびに衝撃を強く受け止めることになり、腕への負担が増えます
下の表に、疲れやすいNG例と負担の少ないOK例をまとめました。
| 場面 | 疲れやすいNG例 | 負担の少ないOK例 |
|---|---|---|
| 体重の支え方 | 脇当てに体重を預ける | 手のひらの付け根とグリップで支える |
| 姿勢 | 猫背で足元ばかり見る | 視線は正面、胸を軽く張る |
| グリップの握り方 | 指先だけで握る | 手のひら全体を使い、肘は軽く曲げる |
| 歩幅・テンポ | 大股で急ぐ | 歩幅を抑え、一定のリズムで進む |
| 長時間使用時 | 休憩を取らず歩き続ける | こまめに休み、姿勢をリセットする |
長時間使うときの休め方|疲労をためないコツ
通院や外出で長い距離を歩く場合は、疲れを感じる前に休憩を挟むことがポイントです。目安として15〜20分ごと、あるいは信号待ちや駅のベンチなど立ち止まる機会を利用して、こまめに体をリセットしましょう。
- 休むときは健側の足に体重を預ける:松葉杖を体の前に軽く立てかけ、健側の足で立って腕を休ませます
- 手首・肩を軽く回す:立ち止まったタイミングで手首を回したり肩をすくめて下ろしたりすると、こわばりが和らぎます
- 座れる場所では積極的に座る:無理に立ち続けず、ベンチや椅子があれば腕を完全に休ませる時間を作ります
- グリップや脇当てのカバーを見直す:クッション性のあるカバーに交換すると、同じ歩き方でも手や脇への負担が軽くなります
疲れやすさが続く場合は、歩き方だけでなく松葉杖自体の重さや高さが合っていない可能性もあります。商品選びのポイントは折りたたみ松葉杖おすすめ比較5選で解説していますので参考にしてください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 松葉杖の歩き方に慣れるまでどのくらいかかりますか?
個人差はありますが、平地の歩行であれば数日〜1週間程度でリズムをつかめる方が多いです。最初のうちは無理に距離を伸ばそうとせず、室内や人の少ない場所で「正しい姿勢」「3動作の流れ」を確認しながら少しずつ歩数を増やすと、安全に慣れていくことができます。
Q2. 平地は歩けても坂道や傾斜のある道が不安です。コツはありますか?
上り坂では歩幅をいつもより小さくし、松葉杖を出す位置も近めにすると安定します。下り坂は特に転倒のリスクが高いため、平地よりさらにゆっくり、一歩ごとに体勢を整えながら進んでください。傾斜がきつい道は無理をせず、迂回できるルートがないか事前に確認しておくと安心です。
Q3. 自分の歩き方が正しいかどうか、どうやって確認すればいいですか?
窓ガラスやショーウィンドウに映る姿を横から確認したり、家族に後ろや横から見てもらったりする方法が手軽です。チェックするポイントは「猫背になっていないか」「脇に体重を預けていないか」「歩幅が広すぎないか」の3点です。可能であれば通院時にリハビリ担当者にフォームを見てもらうと、より確実に修正できます。
Q4. 手首や肩、腕が疲れやすいのですが、持ち方を見直すコツはありますか?
グリップは指先だけでなく手のひら全体で包むように握り、肘を軽く曲げた状態を保つと、腕全体で力を分散できます。握る位置が毎回バラバラだと余計な力が入りやすいため、握る位置を一定にすることも疲労軽減につながります。それでも改善しない場合は、グリップの形状や松葉杖の高さが体に合っていない可能性があるため、見直しを検討してください。
松葉杖の歩き方は、体重を支える場所と姿勢さえ意識できれば、日を追うごとに自然と体になじんでいきます。焦らず一つずつ確認しながら、安全な歩行フォームを身につけてください。
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